5-デアザフラビンは、老化克服に挑む新型ビタミンとして注目されています。効果自体はまだ解明されていない部分もありますが、エネルギーの工場である「ミトコンドリア」と長寿遺伝子である「サーチュイン遺伝子」を活性化する効果が強いことが分かっています。
今回は、5-デアザフラビンの働きや今後の展望について詳しく見てみましょう。
5-デアザフラビンはミトコンドリアを活性化させる!
5-デアザフラビンによる老化克服効果の一つが『ミトコンドリアの活性化』です。まずは、ミトコンドリアが活性化するとどのような効果が期待できるのか解説します。
エネルギーを供給する発電所
ミトコンドリアは、細胞一つひとつに含まれる細胞内小器官の一種です。私たちの体は約60兆個の細胞でできていますが、ミトコンドリアは1つの細胞に1000~2000個含まれているとされています1)。体重の約10%を占めるという見解もあり、私たちの体には非常に多くのミトコンドリアが存在しているのです。
ミトコンドリアの主な働きは、体内に取り込まれたブドウ糖などの栄養素からエネルギーを作り出すこと。私たちが生きていくために必要なエネルギーの大部分はミトコンドリアで作られています。ミトコンドリア以外の場所でもエネルギーを作り出すことはできますが、ミトコンドリアは他の部位と比べると、同じ原料から18倍ものエネルギーを作り出すことが可能です2)。
効率よくエネルギーを作り出すにはミトコンドリアの存在が欠かせないと言えます。5-デアザフラビンによってミトコンドリアの機能が高まると、効率よくエネルギーを作ることができるようになり、身体機能を向上させることができるでしょう。
細胞の新陳代謝を制御する
ミトコンドリアの働きでもう一つ重要なのは、『細胞の新陳代謝の制御』です。細胞は常に新しく生まれ、古くなった細胞は死滅していきます。このように時期が来れば自然と細胞が自ら消えていく現象を「アポトーシス」と呼びます。ミトコンドリアはアポトーシスの調整も担っているのです。
さまざまな研究により、細胞内部でDNA損傷、酸化ストレス、タンパク質の変性などが生じると、ミトコンドリアはアポトーシスを引き起こす物質を放出するようになることが分かっています。
アポトーシスは古くなった細胞が蓄積するのを防ぐ仕組みです。そのため、ミトコンドリアがしっかりと機能すれば、老化を予防できるのではないかと考えられています。実際に、ミトコンドリアの機能を高める物質を投与すると老化した細胞が減少した、ということも報告されています。
5-デアザフラビンでミトコンドリアの機能が高まると、古くなった細胞が体内に溜まりにくくなり、老化の克服に役立つと考えられます。
オートファジー能力を高める
オートファジーは「自食作用」とも呼ばれ、状態を良好に保つために細胞内に溜まった老廃物を自分自身で取り除くことです。ミトコンドリアにはオートファジー能力があることも分かっています。
オートファジーは例えるならば、計画的な自動車の修理と言えます。部品を交換せずに使用し続けた車は寿命が短くなるもの。一方で、適度な頻度でしっかりメンテナンスをした車はよい状態をキープすることが可能です。
ミトコンドリアが活性化するとオートファジー能力も高まり、老廃物が少ない若々しい細胞を維持できると考えられます。
長寿遺伝子を活性化させる!
5-デアザフラビンは、長寿遺伝子とされるサーチュイン遺伝子を活性化する働きがあることも知られています。サーチュイン遺伝子が活性化するとどのようなメリットがあるのでしょうか?
遺伝子レベルでのクリーニング
サーチュイン遺伝子は、老化を予防して長寿を叶える遺伝子とされています。そのため、長寿遺伝子とも呼ばれ、多くの病気の治療や美容への応用が目指されています。
現時点で分かっているサーチュイン遺伝子の働きとしては、遺伝子レベルでのクリーニングが挙げられます。具体的には、サーチュイン遺伝子には「ヒストン脱アセチル化」を促す働きがあります。
ヒストン脱アセチル化とは、簡単に言えば傷ついたDNAを修復させて細胞が老化するのを防ぐ働きのことです。つまり、サーチュイン遺伝子はダメージを受けたDNAから余分なものを取り除いて修復し、若返りを促す働きがあるのです。
5-デアザフラビンによってサーチュイン遺伝子が活性化されると、遺伝子レベルでのクリーニングが活発に。若々しい細胞をキープすることができるようになります。
サーチュイン遺伝子は美容にもよい?
私たちの細胞は常に紫外線などのダメージを受けています。これらのダメージは細胞のDNAを傷つけ、結果として老化を促します。
サーチュイン遺伝子は傷ついてDNAを修復する効果があるため、美容によいと考えられています。実際、サーチュイン遺伝子を活性化させる成分が含まれた化粧品の開発も行われています。5-デアザフラビンもその一つです。
また、サーチュイン遺伝子にはいくつかのタイプがあり、上述したミトコンドリアに含まれるものもあります。ミトコンドリアに含まれるサーチュイン遺伝子は、活性酸素を抑えるなど、老化予防に効果的な働きを持つことが分かっています。
5-デアザフラビンはどのように利用できる可能性がある?
5-デアザフラビンは、ミトコンドリアとサーチュイン遺伝子を活性化する力が非常につよいとされています。さまざまな研究が重ねられ、化粧品成分として使用されるようになっていますが、病気の治療に役立つとの見解も。5-デアザフラビンの可能性について見てみましょう。
認知症を改善する?
5-デアザフラビンには、体内の代謝を改善することで認知症を改善する効果を持つという見解も報告されています。認知症の一種であるアルツハイマー病は、脳の細胞への特殊なタンパク質の蓄積が原因で発症すると考えられています。5-デアザフラビンによってサーチュイン遺伝子が活性化すると、遺伝子レベルでのクリーニングが行われ、特殊なタンパクの蓄積を抑えてアルツハイマー病の改善につながるのではないかとされています。
年齢による諸症状を改善する?
サーチュイン遺伝子には活性酸素を消し去る働きを持つタイプもあります。シミやシワなど美容上のトラブルを改善するだけではなく、加齢による難聴の予防や改善にも役立つ可能性が研究から報告されました。
サーチュイン遺伝子の活性化を促す5-デアザフラビンにも年齢による諸症状を改善する効果が期待できるかも知れません。
まとめ
5-デアザフラビンには、ミトコンドリアとサーチュイン遺伝子を強く活性化する効果があります。ミトコンドリアは体に必要なエネルギーが作られる場であり、アポトーシスやオートファジーの調節も担う細胞内小器官です。また、サーチュイン遺伝子は、DNAのダメージを修復して細胞を若々しく保つ働きがあります。
そのため、5-デアザフラビンには老化を克服して若々しさを叶える効果があると期待できます。また、美容や病気の治療に応用できる可能性もあるでしょう。
今後も更なる解明が進んで、5-デアザフラビンが多くの分野で活用されることを期待しましょう。
参考文献
2)21世紀の新常識「老化は治る。」新型ビタミンが世界を救う!!
乾雅人 (著), 日本先進医療臨床研究会 (編集)