デアザフラビンとは

5-デアザフラビンは認知症を治す?現在の研究データと実例を詳しく解説

5-デアザフラビンはミトコンドリアと長寿遺伝子「サーチュイン遺伝子」を活性化することで、老化に伴う症状や病気を改善する効果が期待されている成分です。認知症を治す可能性を示唆する研究結果や症例報告もされており、新たな認知症治療の成分として取り入れられる可能性も期待されています。
今回は、5-デアザフラビンの特徴や認知症との関係について詳しく解説します。

5-デアザフラビンとはどんな成分?

5-デアザフラビンは現在、老化克服に挑む医療サプリメントとして注目を集めている成分です。広く美容医療で使用されている若返り成分NMNよりもはるかに高い効果を持つとされ、実用に向けてさまざまな研究が重ねられています。
まず、5-デアザフラビンとはどのような成分なのか詳しく見てみましょう。

成分

5-デアザフラビンはビタミンB2を変えた成分

5-デアザフラビンは、ビタミンB2の化学的な構造の一部を変化させた物質です。ビタミンB2はベンゼン環という輪っかのような構造が3つ重なってできており、そこの第5位の位置に付いている窒素元素をCH基に変換した成分が5-デアザフラビンと呼ばれています。ビタミンB2は自然界にも広く存在する成分であり、5-デアザフラビンは新型ビタミンB2などと呼ばれることもあります。
5-デアザフラビンは、ベンゼン環が3つ重なった構造であるため化学的に安定しているのが特徴です。そのため、加工しやすく、さらに常温での保管が可能なため流通管理が煩雑にならない点がメリットといえます。

5-デアザフラビンにはどのような作用がある?

5-デアザフラビンは、以下の2つの作用を持つことで老化克服を可能にすると考えられています。

ミトコンドリアの活性化

ミトコンドリア

5-デアザフラビンの主な作用の一つにミトコンドリアの活性化が挙げられます。ミトコンドリアは細胞の中にある小器官であり、1つの細胞には100~2000個ものミトコンドリアが含まれています。
ミトコンドリアでは私たちの活動に必要なエネルギーが作られており、総エネルギーの約90%を作る細胞内小器官です。また、ミトコンドリアには古くなったり、異常が生じたりした細胞を死滅させて新しい細胞へ置き換わるのを促す「アポトーシス」という現象を制御する働きもあります。
ミトコンドリアのこれらの機能は年齢を重ねると低下していくことが分かっています。その結果、全身にさまざまな老化現象を引き起こすのです。5-デアザフラビンは、ミトコンドリアを活性化することで老化による種々の症状や病気を予防・改善する効果が期待できます。

長寿遺伝子の活性化

遺伝子の活性化

5-デアザフラビンには、長寿遺伝子とも呼ばれるサーチュイン遺伝子を活性化する作用もあります。サーチュイン遺伝子は2000年に始めてその作用が報告された遺伝子です。全身の老化によるさまざまな症状を予防し、寿命を延ばす働きがあると考えられています。
サーチュイン遺伝子には現在のところ7つのタイプがあることが分かっています。それぞれの働きによって以下のような老化に伴う症状や病気の改善が期待されています。

  • 認知機能低下
  • 視力や聴力低下
  • 生活習慣病
  • 肥満
  • 不妊
  • 運動機能障害

5-デアザフラビンには認知症を改善する効果が期待できる?

5-デアザフラビンはミトコンドリアとサーチュイン遺伝子を活性化することで、老化克服効果を発揮すると考えられています。医療や美容に取り入れられつつあり、多くの研究が行われているのが現状です。
すでに5-デアザフラビンの有益な効果を示唆する報告はたくさん上がっていますが、なかでも認知機能の改善効果が注目されています。5-デアザフラビンと認知症の関係について詳しく見てみましょう。

老夫婦

神経細胞を保護する効果がある!

2021年に福岡大学の研究チームが、5-デアザフラビンには神経細胞を保護する効果があることを示唆する研究結果を発表しています。
具体的には、マウスの海馬(記憶を司る脳の部位)を薄くスライスし、何も加えない群、従来の若返り成分であるNMNを加えた群、5-デアザフラビンを加えた群の3つのグループに分けて神経細胞の変化を調べました。その結果、何も加えない群とNMNを加えた群は神経細胞に変化はありませんでした。一方、5-デアザフラビンを加えた群は神経細胞の軸索という部位が延長したことが明らかになっています。
通常、神経細胞の軸索が延長することはなく、この研究結果から5-デアザフラビンには神経細胞を保護する可能性を持つことが示唆されました。

また、2022年にも日本国内でマウスの脳を用いた別の研究結果が発表されています。この研究でも同じくマウスの脳を薄くスライスして3つの群に分けてストレスを与えた後の神経細胞内のカルシウム濃度変化が調べられました。NMNを加えた群と5-デアザフラビンを加えた群は、細胞内のカルシウム濃度は上昇し、ミトコンドリア内のカルシウム濃度の上昇は抑制されたことが明らかになっています。この結果は、NMNと5-デアザフラビンがストレスから神経細胞を保護する効果を持つことを示唆しました。

ねずみ

これら2つの研究結果から、5-デアザフラビンには神経細胞を保護する効果があると考えられるようになったのです。

5-デアザフラビンは認知症を治す?

5-デアザフラビンは神経細胞を保護して、認知症の治療に効果を発揮する可能性が考えられています。まだ確実に効果があると言える段階ではありませんが、アルツハイマー型認知症は脳内のアミロイドβというタンパク質が蓄積することで発症する病気です。
アミロイドβの蓄積によって血流が低下することで脳の機能低下が生じると仮定した場合、5-デアザフラビンによる代謝改善でアルツハイマー型認知症を抑制できるのではないかと考えられています。

5-デアザフラビンの投与で認知症が改善した例

老夫婦

実際に認知症患者に5-デアザフラビンのサプリメントを投与したところ、症状が大きく改善したという症例も報告されています。
この症例患者は80代後半の女性であり、意味のない言葉をブツブツ言う、辻褄が合わないことを言う、といった症状が目立つようになり近医を受診。アルツハイマー型認知症と診断されました。有効な治療法はなく、症状はどんどん進行して日常生活でも介助が必要になったとのことです。
5-デアザフラビンの内服を開始すると、翌日には意味のある言葉を話すように。さらに一週間後には日常生活上の動作ができるようになり、一か月で会話のコミュニケーションが可能になりました。半年後には認知症発症前の状態に戻ったことが報告されています。
この患者は検査の結果、脳の血流が低下していることが分かりました。5-デアザフラビンによって血流が低下した状態でも細胞一つ一つの代謝システムが改善したことで、脳の機能の維持や改善ができたのではないかと考えられています。

まとめ

5-デアザフラビンは老化克服に挑む新たな若返り成分として注目されています。現在、美容医療に広く使用されているNMNと同様、ミトコンドリアとサーチュイン遺伝子を活性化する効果がありますが、そのパワーは数倍~数十倍とのこと。高い効果にも注目が集まっています。
5-デアザフラビンには老化による症状や病気を予防する効果が期待されており、実際に効果があったとする報告も多数挙げられています。認知症もその一つです。動物実験や実際に認知症患者に投与した結果から5-デアザフラビンは認知症の新たな治療薬となる可能性が考えられます。
今後さらに研究が進んで認知症治療に応用される日が来ることを期待しましょう。

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